詩：また多めです

さらに九本投下、あるだけ全部行きます。



「溶解するもの」

漂っている　果ての無い空間を
見えるもの全て　体を通り抜けてゆく
それが実体なのか、虚像なのか私にはわからない
ただっ広いその空間の中で、一人宴を繰り広げる
燃え尽きぬように　体を維持するために
狂宴に身をゆだね、自我から開放される

その先に見えるものが、禍々しいものであろうと
狂気に取り付かれた私にはわからない

そこには誰もいない
最初から誰もいない

消えてゆく　私も消えてゆく
食物を摂取できぬカゲロウのように
なすすべなく　人生に溶かされてゆく

色のない空間で、一人目を覚ます


「舞台装置」

ぼろきれに身を包み、私はステージに立っている
言葉を発する事もなく、装置のように壇上にたたずむ
身を裂かれ体液が噴出そうとも、姿勢を崩さずに

私は機械　私は人形　痛覚も神経も存在しない
ただそこに存在し　衆目を不快にさせるだけの装置

目的など無い　人生など無い　産まれたときからそこにいる
感情も　理性も　母という生物の胎内に置き忘れてきてしまったから
それのともし火が消えたとき　私は永遠の装置になる

噴出す体液をうつろな目で見つめ　音も無く横たわる
空気は変わることなく　私は無造作に蹴り飛ばされる

白い粉のようなものが　私を隠してゆく


「光陰」

逃げてゆく影の中　追ってくる白い影
逃げてゆく影の中　追ってくる白い影

歪んでいく世界　光の中へ溶けてゆく
歪んでいく人格　極彩色に染まってく

とがったもので貫くと　白い影が追ってくる
緑色を燃やすと、白い影が追ってくる

快感が噴出し　光が全てを曲げてゆく
骨が抜け　闇が全てを飲み込んでゆく

黄色い曲線を粘液に突っ込み
甲高い音を鳴らす楽器を奏でる
壊れて音が出なくなるまで

光をともなう大海に　影をささげよう
影をともなう大海に　光をささげよう

逃げてゆく影の中　追ってくる白い影
逃げてゆく影の中　追ってくる白い影

｢削る｣

染まってしまえ真っ黒に お前の顔など見たくない
止まってしまえ死体のように お前の顔など見たくない

遠い空に視線を送り 想いをはせる
もう会うことのない 過去の人々に
白んだ空に視線を送り 記憶を削る
過去の思いを 断ち切るために

忘れてしまいたいよ 楽しいことなど
消してしまいたいよ 苦しいことなど

愚かなこの気持ちを ぶち壊してくれ
見えないものを 見えるようにしてくれ
失ったことなど 痛くはないから


｢ひとり｣


君の孤独を抱えきれず、一人俯く
なぜ、そこまで頑なに一人を望むの
ねえ、どうして私の言葉は届かないの


君の流した涙の中で、一人もがく
ねえ、どうして君は私を拒むの
ねえ、どうして君は私を見つめるの

君の心の闇を払いきれず、一人涙する
怖がらずに心を開いて
誰も君を一人になんてしないから

ずっと私が支えているから、手を離さないで
ずっと私が側にいるから、涙なんか流さないで
君は一人じゃないよ


「ウツボカズラ」

誰だっけ俺の中に入ってるの
誰だっけ俺を中に入れてたの

頼んでいない　望んでいない　好きではない
したくない　　やりたくない　気持ち良くない

誰でもいいんだ？　気持ちよけりゃ
誰でもいいんだ？　痛くなけりゃ
誰でもいいんだ？　美しけりゃ

快楽に根ざした音楽祭は
快楽に溺れた民族の国にある

救われない　快楽には
救われない　性交には
気持ちよくなっても
なにも変わらない 出られない
助けてくれない 助けられない
否定だらけのこの世界
肯定だらけの夢の世界

地獄への穴だとわかっているのに
堕落への穴だとわかっているのに
何故入れられたがるのだろう
何故入れたがるのだろう

世界の半数を占める　ウツボカズラが
甘い匂いで誘ってる　死の淵へと誘ってる

とろけてしまえあの穴で
とろけてしまえあの穴で

いつまでも　なんどでも
穴から生まれる　生命体

快楽主義者とウツボカズラが
世界を埋め尽くしている　


「廃墟」

きている　すぐそこまで
怖いものが　すぐそこまで

逃げられない　いつまでも

やんでない　くるってない　ふつうでもない　存在しない
やってない　やるわけない　いるわけもない　存在しない

あふれる感情　止まらない思考
埋め尽くされる　心の隙間　
どこまでも広がる　悪感情

そこまできている　無の瞬間
そこまできている　有の限界

揺れる視界　たゆたう世界　
そこにあるのは全て現実
そこにあるのは全て虚像

確かで不確かなこの現実
確かに続く殺し合い
永遠に続く殺し合い
螺旋のように続く殺し合い
最初から最後まで殺し合い
生き抜くための殺し合い

人だらけだよ　居場所がない
大地を埋め尽くす　巨石文明
空気を汚染する　鋼鉄文明

遺跡は廃墟で廃墟は遺跡


「狂気」

狂っているのは僕自身　この世界も狂ってる
ひたすら文字を書き続ける腕　血みどろになっても
書く事をやめない　腕が震えだしてもとまることは無い
狂ったように紙の上を走る　意味のない線　
この狂った世界で　滅茶苦茶な文字を書く僕の腕

狂気のうねりの中　すべての理が存在している
予測不能の変態思考　否定も肯定も受け止めて突き進む
消えることの無い衝動　抑えられず吹き飛ぶ理性
狂ったように頭を駆け抜ける　滅茶苦茶に
この狂った世界で　駆け抜けていく僕の狂気


「出会いと別れ」

必要なこと、誰にでもあること
僕にとっては、出会いも別れも、始まり。
出会った瞬間に、新しいことが始まって
別れた瞬間に、新しいことへ踏み出す。

死だって、終わりではない
人が死んで、何か新しいものが生まれることもあれば
人の死をきっかけに、時代が動き出すこともある
終わりってなんだろう
全て前向きに考えれば
終わりなんて、存在しないのかもしれない。

抱えている仕事が終わったら、また新しい仕事がくるように
時が流れている以上「終わる」ということは無いんだろう
動いていても、止まっていても
何かが始まることはあるけれど、終わることはない。

「終わる」って、「終わり」って
どういうことなんだろう
唯一「終わり」がある思うのは、人の作り出した物語

「始まり」という言葉は、凄く素敵で
明るくて、前向きで、希望に満ちている。

「始まり」と「幸せ」ってちょっと似てる。